いらすとや著作権の落とし穴!商用20点ルールと最新NG基準
街中の案内板、テレビの報道解説フリップ、官公庁の広報資料からYouTubeの解説動画に至るまで、日本の視覚的インフラとして定着したフリーイラストサイト「いらすとや」。イラストレーターのみふねたかし氏が手がける温かみのあるタッチは、あらゆる場面で親しまれています。しかし、日常に溶け込みすぎているがゆえに、多くのユーザーが「著作権フリーだから何に使っても自由」という危険な先入観を抱いています。
現場のクリエイターや企業の法務担当者を取材すると、規約の曲解によるトラブルや、公開後の動画・販促物の差し替えに追われる事例が後を絶ちません。無料で手軽に使える素材だからこそ、線引きを誤れば法的リスクに直結します。本稿では、商用利用時の「20点制限」の算出基準、加工改変の境界線、商標登録の禁止条項など、トラブルを回避するために押さえるべき利用規約の本質を解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「いらすとや」は著作権放棄(パブリックドメイン)ではなく、著作者みふねたかし氏が権利を保持したまま一定範囲の無償利用を許諾しているサービスである。
- 要点2:商用利用時の無料枠は「1つの制作物につき20点まで」であり、YouTubeの収益化動画や企業のチラシ・販促物も厳格なカウント対象となる。
- 要点3:ロゴマーク化や商標登録は一律NGであり、21点以上の利用や素材そのものが主役となるグッズ制作には事前の有償対応申請が必須となる。
【2026年最新】いらすとやの著作権構造|「著作権フリー」という最大の誤解
ウェブ上で素材を探す際、多くの人が「フリー素材=著作権が存在しない」と混同しがちです。しかし、いらすとやの著作権はすべて創作者であるイラストレーター・みふねたかし氏に帰属しており、著作権そのものが放棄されたパブリックドメインではありません。利用者が享受しているのは、作者が定めた利用規約の範囲内における「無償利用の権利」に過ぎないという前提を理解する必要があります。
素材サイトの多くが採用する規約体系において、いらすとやは極めて寛容な姿勢を取ってきました。個人利用はもちろん、一般的なビジネスシーンでも無償利用を幅広く認めており、原則としてクレジット表記や利用報告の義務も課していません。この圧倒的な利便性が爆発的な普及を後押しした一方で、「どこまで改変しても文句を言われない」「何をどう使っても訴えられない」という誤った免罪符意識を生み出す原因にもなりました。
法的な観点から見れば、利用規約で禁止されている利用形態に抵触した瞬間、その行為は適法な許諾の範囲を逸脱し、明白な著作権侵害へと反転します。悪質な無断商用利用や規約違反に対しては、後日正規ライセンス料の請求や損害賠償請求に発展するリスクを孕んでいます。

商用利用の「20点制限」と無料・有償の境界線|知らずに犯す規約違反の罠
ビジネスの現場で最も頻発する規約抵触が、いらすとやの商用利用における点数制限です。公式規約には「非商用目的の場合は点数に関係なく無料で利用可能」と明記されている一方、営利目的の商用利用については「1つの制作物につき20点まで無料」という厳格な上限が設けられています。知らずに使うと危険な落とし穴の代表格が、この20点制限のカウント方法に対する認識不足です。
制作現場におけるカウント基準は極めて厳密です。「1つの制作物」の単位は媒体によって異なります。例えば、企業の販促チラシであれば1枚(両面なら1組)、Webサイトであれば1つのサイト全体ではなく「独立した1つの記事やページ単位」、パンフレットであれば「1冊の冊子全体」で計算されます。1つのチラシの中に21個の異なるいらすとや素材を配置した時点で、商用の無料枠をオーバーして規約違反が成立します。
さらに見落とされやすいのが「重複利用」と「パーツ組み合わせ」の扱いです。同一のイラストを同じ制作物内でサイズを変えて複数回配置した場合、それは「1点」としてカウントされます。しかし、男性のイラストに別の「眼鏡」や「帽子」の素材を重ねて1人のキャラクターに仕立て上げた場合、素材としては「3点」を消費した計算になります。デザインの作り込みを進めるうちに、無意識のうちに20点のボーダーラインを突破してしまうケースは日常茶飯事です。
上限の20点を超える場合や、素材そのものを商品化する用途では、必ずみふねたかし氏の窓口を通じて有償対応の手続きを行わなければなりません。無料の範囲と有償の境界線(無料・商用の違い)を整理したものが以下の対照表です。
| 利用シーン | 無料枠の条件・制限 | 超過時の対応・相場感 | 編集部の見解・実務アドバイス |
|---|---|---|---|
| 個人・学校教育利用 | 点数無制限(非営利目的) | 費用発生なし | 公序良俗に反しない限り最も安全な領域。クレジット表記も任意。 |
| 商業チラシ・社外広報 | 1制作物につき20点まで | 21点目から有償(個別見積もり) | パーツ合体によるカウント消費に注意。20点直前でのストップ管理が必須。 |
| YouTube収益化動画 | 動画1本につき20点まで | 個別ライセンス契約が必要 | 収益化ONの時点で商用扱い。テンプレOP・EDの素材も点数に加算される。 |
| 同人誌・即売会頒布物 | 印刷費回収の小規模頒布は配慮あり | 大規模流通・商業出版は有償 | イラスト自体が主役の同人グッズ(アクキー等)は点数に関わらず禁止。 |
| 商品化・グッズ販売 | 無料枠は一切なし(完全不可) | 商用ライセンス交渉が必須 | イラストを主たる価値とするTシャツや文具販売は無断で行えば即権利侵害。 |
| ロゴ・商標出願 | 完全禁止(有償でも不可) | 申請受付自体が存在しない | 独占権の取得は不可。企業のシンボルマークへの組み込みは絶対回避。 |
【実態検証】YouTube動画・同人誌・企業の現場で起きたトラブルのリアル
デジタルコンテンツ制作の現場では、規約の意図せぬ違反が日常的に表面化しています。特に注意すべきはYouTubeでの利用です。動画投稿当初は趣味の非商用チャンネルであっても、パートナープログラムの条件をクリアして広告収益化を有効化した瞬間、そのチャンネル内の動画はすべて「商用目的の制作物」へとステータスが切り替わります。
ある登録者数15万人を誇る解説系YouTuberは、過去に投稿した動画数百本のうち、長尺の解説動画でテンポよく数十種類のいらすとや画像を挿入していたため、収益化後に「1本の動画内で20点制限」を大幅にオーバーしている事実を指摘されました。結果として、過去動画の非公開化や素材の差し替えという膨大な編集作業を余儀なくされました。オープニングやエンディングの共通アイキャッチに使われている素材も1点として積算されるため、本編で使える実質的な枠は17〜18点程度に狭まるという計算を見落としていたのが原因です。
また、即売会カルチャーにおける同人誌の利用でも混乱が見られます。趣味の同人誌即売会で少部数を実費相当で頒布する同人誌の本文や表紙のあしらい程度であれば許容される余地があるものの、「イラストそのものをメインにしたアクリルキーホルダーや缶バッジ、Tシャツ」を制作・頒布する行為は、同人規模であっても明確に禁止されています。素材そのものが製品の付加価値の大半を占めるグッズ化は、みふね氏のビジネス領域を直接侵食するためです。
企業の法務部やデザイン部門からも「クラウドソーシングで外注したバナー画像に、いらすとやの素材が25点使われており、納品後に差し戻した」「外部ライターが作成したオウンドメディアの記事で、アイキャッチに複数の素材をコラージュした結果、制限オーバーとなっていた」といったヒヤリハット事例が多数報告されています。現場の作業者が「無料だから」と安易に素材を盛り込み、最終チェック者が規約を知らないまま見逃すという組織的エラーが後を絶ちません。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|加工改変ルールと商標登録のタブー
ネット上で流布している誤解の中で、法的リスクが特に高いのが「加工改変の自由度」と「権利の独占」に関する2つの盲点です。
第1に、加工や改変のルールです。いらすとやでは、デザインに合わせて「色の変更」「左右反転」「トリミング」「文字入れ」といった軽微な編集は公認されています。しかし、これは「素材の原型や世界観を破壊していい」という意味ではありません。みふねたかし氏の作風を著しく損なうようなグロテスクな切り貼り、差別的・攻撃的な文脈への組み込み、性的コンテンツへの転用は規約で厳しく禁止されています。著作権法上の「著作者人格権(同一性保持権)」は放棄されていないため、いくら無償素材であっても作者の名誉を傷つけるような改変を行えば権利侵害となります。
第2に、企業が最も犯してはならない禁忌が商標登録の禁止(NG)です。いらすとやの素材をトレースしたり、少し手を加えたりして会社のロゴマークや製品のシンボルマークを作成し、特許庁へ商標出願・意匠出願する行為は一切認められていません。商標登録とは、その意匠を自社が排他的・独占的に使用する権利を獲得する手続きです。誰もが共有して使えるオープンな素材を特定の企業が独占することは、素材サイトの存在意義そのものを揺るがす行為であり、有償契約であっても許可されません。
さらに昨今警戒されているのが、画像生成AIの学習データとしての無断利用です。いらすとやの素材を大量にスクレイピングして特定の追加学習モデル(LoRAなど)を作成し、いらすとや風の画像を自動生成させて配布・販売する行為は、規約上の「素材としての再配布禁止」および著作権法上の公正な利用の限度を超える不正利用とみなされます。
【プロの結論】コンプライアンス心理とビジュアル依存から見出すべき教訓
日本社会において、いらすとやがこれほどまでに浸透したのは、その親しみやすさと「怒られない表現」としての無難さがあったからです。しかし、社会心理学の視点から見ると、ここには「無料素材に対する甘え(フリーライダー心理)」と「ビジュアル思考停止」という組織の病理が透けて見えます。
多くの担当者が、規約原文を一度も読まずに「みんなが使っているから安全だろう」という同調圧力に依存しています。このコンプライアンス意識の希薄化は、著作権侵害の警告を受けた際、組織に深刻なブランド棄損をもたらします。素材選定においては、以下のような明確な判断基準を持つことが不可欠です。
いらすとやを積極的に活用してよいケース
- 社内資料・プレゼン資料:外部へ販売・公開しないクローズドな環境での資料作成。
- 学校・教育現場・自治体の啓発チラシ:完全非営利であり、住民への分かりやすい周知が主目的である場合。
- 素材数が厳密に管理できる商用Webページ:記事1本につき使用素材を3〜5点程度に抑え、点数カウントが確実に把握できる小規模コンテンツ。
いらすとやの使用を慎重に判断、あるいは回避すべきケース
- 企業ブランディングの中核となる制作物:コーポレートアイデンティティ(CI)、企業のロゴ、メイン看板。素材の独占ができず、他社とビジュアルが重複して信頼感を損なうリスクが高い。
- 長尺の動画コンテンツ・大型カタログ:多数のイラストを挿入する必要があり、20点の制限管理が破綻しやすい制作物。
- グッズ販売や有料コンテンツの主たるグラフィック:素材そのものを価値として収益を上げるビジネスモデル。商標や著作権の完全なクリーン化が求められるプロジェクトでは、オリジナルの描き下ろしイラストレーターを起用すべきです。

【いらすとやの著作権】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:商用利用で20点を超える場合、有償ライセンスの費用相場や申請方法は?
A1:公式サイトのお問い合わせフォームから、媒体名、使用点数、用途、期間などを明記して事前に申請します。料金は利用規模や媒体の露出度によって変動しますが、最低利用料金が設定されており、一般的には数万円規模からの個別見積もりとなります。無断で使用した後に発覚した場合はペナルティが発生する恐れがあるため、必ず公開前の事前連絡が必須です。
Q2:YouTubeチャンネルで将来収益化を目指している場合、初期の動画も20点以内に抑えるべき?
A2:抑えるべきです。動画投稿時点で収益化が無効であっても、将来的にチャンネルが収益化された際、過去のアーカイブ動画がそのまま公開されていれば、その時点で商用利用と判定されます。将来的に1本でも収益化する可能性があるチャンネルであれば、初期動画から「1本あたり20点以内」のルールを徹底して制作するのが安全です。
Q3:背景の透過処理や、服の色を自社のコーポレートカラーに変える加工は許可される?
A3:許可されています。デザインのレイアウトに合わせた背景の切り抜き、反転、サイズ調整、常識的な範囲でのカラー変更は規約内で認められている加工の範囲内です。ただし、キャラクターの表情を不気味に歪めたり、公序良俗に反するアイテムを持たせるなど、著作者の意図に反する著しい改変は規約違反となります。
Q4:いらすとやの画像をWebサイトに使う際、クレジット表記は本当に不要?
A4:商用・非商用を問わず、クレジット表記やリンクの貼り付けは原則不要です。表記しなくても規約違反にはなりません。ただし、運営元の判断や感謝の意を込めて「イラスト:いらすとや」と記載することは推奨されており、記載すること自体は何ら問題ありません。
まとめ:リスクをゼロにするための確認フローと健全な素材運用
いらすとやは、日本のクリエイティブシーンを劇的に効率化し、誰もがビジュアルコミュニケーションを手軽に行える環境を提供してくれた偉大なリソースです。しかし、その利便性の裏側には、創作者みふねたかし氏の著作権と、明確に定義された利用規約が存在しています。
商用目的であれば「1制作物20点まで」という鉄則を組織全体で共有すること。加工や利用用途が公序良俗や商標権の侵害に当たらないか、公開前にリーガルチェックを挟むこと。このわずかな確認フローを怠らない姿勢こそが、クリエイターへの敬意であり、企業や発信者を予期せぬ法的トラブルから守る最大の防波堤となります。 (出典: いらすと や 著作 権(Yahoo!ニュース))